見たいものだけ見てそれ以外は無視すること

映像/石粉粘土

2017

 電車に乗っていて流れる景色の中で遠くの山を見たとき、自分は列車のスピードと同じように動いているはずなのに遠くの山は静止しているように見えることがあります。絶えず流れていく手前の景色と自身の身体、しかし静止したように見える遠くの山。その時に目と身体は繋がっているのに連動しないような身体感覚のズレを感じました。その感覚は普段「ものを見る」ことにも輪郭と物質という点で共通しているというのがわたしの考えです。

 「見たいものだけ見てそれ以外は無視すること」という作品は、プロジェクターで自身に画像や映像を投影して対面にある鏡で自身に投影された像を見ながら粘土でその輪郭線を触っていくという行為を記録したものです。できあがった粘土でできた物体は、不恰好でハリボテのような形をしています。しかし、その形こそが身体の感覚のズレを限りなく無くした現在進行形の「見ている」ということを表したものであると考えています。

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